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「未来のオフィスが担うべき5つの役割」レポート

スマートフォンの普及率も8割に近づき、Wifiがつながるスポットもどんどん増えて行く昨今、デバイスや通信環境の進展で「いつでもどこでも働ける」と言っても過言ではない時代になってきています。「カフェで働く」というようなシーンも、もはや全く普通に見かけるようになってきていますよね。

一方、従来の働く場の代表である「オフィス」は、企業にとっては多大なる費用(賃料や維持費など)を発生しつづける「設備」でもあります。いつでもどこでも働けるこの時代がさらに進展していくと、企業にとってこの「オフィス」に投資し続ける意味は果たして残るのでしょうか?もしかして、自社のオフィスというものは要らなくなる時代が来るのでしょうか?

ワークスタイル研究所では、国内外の様々な先進事例の収集・分析を通じ、オフィスというものの意味をあらためて問い直してきています。本レポートでは、その研究活動から得られた、今後のオフィスに求められる役割としての「5つの仮説」を市場の反応と共にご紹介します。

オフィスの未来に影響する3つのトレンド

まずは、今後のオフィスに求められる役割を考える上で前提となる、いくつかのトレンドをあらためて押さえてみましょう。ここでは大きく、下記3つのトレンドについて考えてみたいと思います。

  • 1.「ワーカー」の意向はどう変わっていくのか
  • 2.「テクノロジー / デバイス」はどう変わっていくのか
  • 3.オフィス以外の働く場はどう変わっていくのか

これらのトレンドについて、それぞれ既にメディア等々で語られている内容をまとめてみます。

■1.「ワーカー」の意向はどう変わっていくのか

いくつかの切り口で、特にどこで働きたいか、という観点も念頭に置きながら見てみます。

Y世代 / ミレニアル世代

2025年には労働力の過半数を占めるといわれているY世代 / ミレニアル世代ですが、それ以前の世代に比べて、「やりたいことをうまくこなすために、仕事の仕方や場所を自由に選びたい」という意向を強く持っているようです

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出典:コクヨ独自調査



女性ワーカー

女性の理想のライフコースとして過去より増加してきているのが「仕事と家庭の両立」です。両立の上での課題は多岐にわたりますが、家事や育児も見据えたうえで、働く時間や場所を最適化したいという意向も高いようです。

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出典:社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」



副業ワーカー

経産省が「雇用関係によらない働き方」と題して研究会を立ち上げたことで、注目が拡大した複業という働き方。その日の予定や作業内容に応じて働く場を使い分けたいが、コワーキングは費用がかさみ、かといってカフェは席がいつもあるとは限らない、などの悩みもあるようです。

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出典:リージャスグループ「働き方に関するグローバル調査」



このような、いくつかの切り口でのワーカーの変化は以下のようにまとめられそうです。

トレンド1働くことに関して、ワーカーは「目的に合わせて働く場所を自由に選びたい」という意向を拡大していっている

■2.「テクノロジー / デバイス」はどう変わっていくのか

新たなテクノロジーやデバイスの登場によって、それまでのルールが大きく書き換わる、ということがあります。働くシーンで言うと、例えばパソコン作業を例にとって考えてみます。

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上記のように、デバイスが変化することで、もともと自席で行うものだったパソコン作業が、ある程度は社外や移動中含め場所を問わずできるようになってきていますよね。「どこで作業できるか」というルールが、デバイスの進化により大きく書き換わってきたのがわかります。

これからの働くルールを変え得る最前線のテクノロジーやデバイスには、どんなものが出てきているでしょうか。いくつか例を挙げてみてみたいと思います。

例えばこれは、網膜に直接映像を投射することで、ディスプレイが無くても情報が閲覧できるデバイスです。

網膜走査型レーザアイウェア – QDレーザー

こういったものが一般化すると、「情報の閲覧」ということが、完全に場所から開放されていきそうです。

次にこれは、紙がなくても書けるペン型デバイスです。ペンが動いた軌跡をペン先のセンサーが捉え、書かれた文字情報を連動しているスマホに送信する、というものです。

Phree - OTM Technologies Ltd.

これは、平面さえあればどこでもものを書いて記録できる、という変化につながりそうです。

さらにこれは、キーボードがなくても入力できるデバイスです。キーを打とうとする指の動きを感知して、キーボードに類似した入力機器としてとして機能するものです。

TAP – TAP systems Inc.

これがうまく機能すると、キーボードがない場所でも、スマホのちまちました入力インターフェースで我慢しなくてよくなるかもしれません。

最後にこれは、街中で働くハブになるベンチです。ソーラーパネルが設置されており、そこから生み出す電力にてスマホなどが充電でき、Wifiスポットにもなっている、というものです。

Soofa Bench – Soofa

これが街中に普及すると、充電するためやWifiに接続するために、オフィスに戻ったりカフェに寄ったりする必要がなくなっていくかもしれません。

ここで例示したようなテクノロジー / デバイスの変化は、以下のようにまとめられそうです。

トレンド2働くシーンに関連するテクノロジーやデバイスは、「ここじゃないと働けない」という制限をなくし、働く場を自由化する方向に進化していっている


■3.オフィス以外の働く場はどう変わっていくのか

「オフィス以外」の街中の様々な場も、ワーカーの「働く」を受け入れるために様々に変化してきている現状があります。

まずは、街中ではもう完全に市民権を得たといってもよい、カフェで働くシーンです。

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電源もWifiも、さらにおいしいコーヒーも完備。「スタバでMac開いてドヤ顔」なんて言われはじめたのも、もう何年も前になりますね。ショッピングモールなどのフードコートでも、同じようなシーンが見受けられます。

また、最近の動きで見逃せないのは、「コワーキングスペース」の台頭です。

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コクヨでも以前はDESK@(デスカット)という貸しオフィス事業を営んでおりましたが、現在は業態変更しMOV Creative Loungeというコワーキングスペースを渋谷にて運営しています。

貸しオフィス事業の代表格「Regus」とコワーキング事業の代表格「wework」を比較したところ、拠点数などの事業規模はRegusが一ケタ上であるものの、市場からの期待を反映する企業評価額はweworkがRegusの数倍、という状況になるくらい、コワーキングという業態は昨今大きな注目を集めています。

このコワーキングという業態、市場が拡大していると同時に、そのあり方も多様化してきています。ものづくりを支えるコワーキング、ジムに併設されたコワーキング、女性起業家専用のコワーキング、ベッドタウンと都市部の中間部にある郊外型のコワーキング等々、街中のあらゆる場所であらゆるニーズを受け止めはじめています。

モノづくりできるコワーキング:DMM.make AKIBA

スポーツジムと一緒になったコワーキング:Equinox

女性起業家専用のコワーキング:Wing

車通勤者用 郊外型コワーキング
WORKBAR at Staples

さらには、米国でのサービスですが、自宅が同じ方向の社員同士でライドシェアし、異部門間コミュニケーションを帰宅中に図る、つまり「移動時間を働く場と捉える」ような概念も出てきています。

同じ方向に帰宅する社員同士の
ライドシェア:SPLT

街全体が、ワーカーの働くを受け止める方向に変化していく様子がひしひしと感じ取れますね。これらの事例は、以下のようにまとめられそうです。

トレンド3街中で、オフィス以外でも働ける場所が増大し、その利用も拡大してきている

課題提起|「今後もオフィスって本当に必要であり続けるのか?」

ここまでで挙がった3つのトレンドのまとめを並べてみます。

トレンド1
ワーカーは「目的に合わせて働く場所を自由に選びたい」という意向を拡大していっている

トレンド2
働くシーンに関連するテクノロジーやデバイスは、「ここじゃないと働けない」という制限をなくし、働く場を自由化する方向に進化していっている

トレンド3
街中で、オフィス以外でも働ける場所が増大し、その利用も拡大してきている

この3つのトレンドを踏まえたうえで、いよいよ本題です。今後も、オフィスは本当に必要であり続けるのでしょうか?
企業は、オフィスを構えるための投資をし続ける意味が将来的にもあるのでしょうか?

ワークスタイル研究所は、それでもやはりオフィスは必要!と考えます

だってだって、オフィスがなくなるとオフィス家具が売れなくなって、コクヨがつぶれちゃうから…

というのはもちろんウソですが、ワークスタイル研究所としては、オフィスは今よりもさらに明確な役割を持って存在し続ける、と考えています。

もちろん、今まで事例を見てきたように、「働く場が街中に分散していく」というのはおそらく今後も続くトレンドと考えられますし、自宅とオフィスの往復のみだった時代に比べ、目的に応じた場所の使い分けはどんどん進んでいくと考えられます。

そんな中でも、やはりオフィスでなくてはできないこと、オフィスだからこそうまくできること、というものは残っていくはずであり、それを受け止める場としてオフィスは残り続けると考えます。

では、何がオフィスの新たな役割として残っていくのでしょうか?働くシーンの中で、自宅や3rdプレイス、そして公共の場よりも、オフィスのほうがうまく担えることは何か?という方向性で考えてみます。

ワークスタイル研究所が考える、今後のオフィスに求められる5つの機能仮説

ワークスタイル研究所にてこれまで収集・分析してきた国内外の事例を俯瞰し、今後のオフィスに求められるであろう5つの機能を、ワーカー視点、経営視点、新たな視点という3区分にて仮説立てました。

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それぞれの仮説を、その兆しが感じられる事例と共に見ていきたいと思います。

仮説1) オフィスは「チームワークとインフォーマルなコミュニケーション」を受け止める場として残っていく

下記は、米シアトルにあるマイクロソフト社のクラウドサービス部門のオフィスです。「部署ごとにチームルームが与えられ、そのしつらえや運用はチームに一任される」という、部署ごとに最適化できるオフィスとなっています。

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それぞれの部署のはたらき方に応じて、ミーティングルームとして使ってもいいし、プロジェクトルームにしてもいい。「こんなテーブルやソファを入れたい」という希望は、設計段階でリクエストできるようです。

チームの個性とつながりをカジュアルに育むこのようなスペースは、自宅ではもちろん、街中のカフェやコワーキングなどでも実現は難しいですよね。「チームワークを育む場」は、オフィスならでは実現できる一つの役割として残っていきそうです。

また、こういった場があると、特に正式な打ち合わせがなくとも人が集い、インフォーマルなコミュニケーションが発生することも重要です。このインフォーマルなコミュニケーションが起こると、何が良いのでしょうか?これは「トランザクティブ・メモリーという考え方によって、組織の柔軟性が高まる」という効果があるようです。

どういうことかというと、組織がいつどんな問題にも柔軟に対応するためには、メンバー全員にすべての業務知識が共有されているのが理想です。ただそれは現実的でないとしたときに、「who knows what=誰が何を知っているのか」がメンバー全体に共有されているだけでも、組織の柔軟性は格段に上がるという考え方です。

この「who knows what」は、形式ばったミーティングではなく、インフォーマルなコミュニケーションを通じて組織に浸透していくといわれています。社内の様々な人たちを偶発的に出合わせ、組織の柔軟性を高めるコミュニケーションを促す場、これも先ほどのチームワークをはぐくむ場と同様、オフィスだからこそ担える役割として残りそうです。

仮説2) オフィスは「商品・サービスの試行錯誤と仮説検証」を受け止める場として残っていく

下記は、カナダのアウトドアメーカーMEC社のオフィス。自社に特化したプロトタイピング設備や、プロトタイプを使った検証スペース、そしてWEBサイトで発信するための商品画像や動画を制作できるスタジオが揃っています。

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素早く作って、試して、発信する、という機能がオフィス内にひとまとまりになり、製品開発を後押ししているようです。

また、下記は米フィンテック企業Square社のオフィス。社内に地元の小売店を誘致し、外に出ずとも自社が手掛ける決済系の新サービスや新製品をいち早く試せる環境を作っているとのこと。

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街中の実店舗に協力を仰ぐよりも、相当手軽に新サービス・新製品のテストができる環境を会社が用意することで、社員はサービス・製品の開発者でありながら、使い手と同じ体験を日々重ねているようです。

「マーケティングが難しくなってきている」と昨今言われます。生活者の価値観も購買動機も多様化の一途をたどる中、マーケティング・リサーチに基づいて立てた企画通りのターゲットに、企画通りの動機でお金を払ってもらえることがなかなか難しくなってきているのではないでしょうか。

そんな中注目されているのが、デザイン思考の一つの側面ともいえる「早め&小さめの失敗をプロトタイプで繰り返していくことで、リスクは最小化し、学びの機会は最大化する」というアプローチです。

こういった、自社製品に特化してプロトタイプ&テストが素早くできる環境、というのも、オフィスだからこそ担える役割の一つといえるのではないでしょうか。

仮説3) オフィスは「迅速な意思決定」を受け止める場として残っていく

下記はカナダの通信大手TELUS社のオフィスです。役員フロアの在り方が見直されている、という面白い事例です。

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従来型の「役員が偉ぶるための役員フロア」ではなく、役員が対話する社外のVIPをもてなす場を社内にしっかり持とうという考え方のようです。

素敵なレストランでの会食ももちろん良いものです。が、社内にこうした場がしつらえられていることで、VIPをもてなしながらも、場合によっては社内の他役員や部下とクイックに連携し、重要な意思決定を迅速に行うことができそうです。

こういった、対社外との意思決定を迅速に行うための場も、オフィスだからこそ担える役割なのではないでしょうか。

仮説4) オフィスは「企業理念の浸透」を受け止める場として残っていく

下記は、フィンランドのゲーム会社Rovio Entertainment社のオフィスです。会社の企業理念を、オフィス空間で体現しているという事例です。

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ベンチャー企業では事業拡大のスピードが速く、それに伴って社員数も激しく増加していくケースも少なくありません。その際に問題となることの一つは、企業文化、企業理念の浸透です。昨年20人だった会社が今年は300人に、というような成長のスピード感の中で、入社してくる社員に毎回研修などで理念を落とし込むのは非現実的になってきています。

そこで、社員が長く身を置くオフィス空間を理念発信のメディアとしてとらえ、会社が大切に思っていること、大事にしていることを空間で表現する、というアプローチがとられているのがこの事例です。

このRovio社では「童心を忘れず、仕事は楽しく。また、人間も鳥も自然界で生きているので自然も大切にしたい。こうした発想を重視していることを、みんなで共有したい」という思いがオフィスデザインに反映されています。

転職や複業といった働き方がより一般化し、ワーカーの帰属意識がより流動的になっていく中、この「企業の文化や理念を伝え、社員の意識や活動に一貫性を生み出す空間メディア」という役割も、ベンチャー企業だけでなくすべての企業においてオフィスに新しく設けるべき役割かもしれません。

仮説5)オフィスは「社員のライフスタイルのサポート」を受け止める場として残っていく

下記は、韓国のオンラインゲームポータル会社NHN Entertainment社のオフィスです。若く多様な社員へ豊かなライフスタイルを後支えし、心身ともに健康な状態で思う存分クリエイティビティを発揮してもらえるような仕組みが満載です。

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自転車通勤をサポートする屋内駐輪場、社員全員が使えるフィットネスジム、育児と仕事を両立したい社員向けには授乳室と近隣に託児施設も完備。頻繁に海外出張する社員のために旅行代理店も構え、トイレで歯を磨くことに抵抗感のある若い世代向けに歯磨き専用スペースまで設けられている。

「ワークとライフの境目が曖昧になってきている」とよく言われます。近接して交じり合うワーク&ライフスタイルを受け止める場、ということも、企業が今後社員に対して用意してあげる意味のある役割になっていくのではないでしょうか。

5つの仮説に対する市場の反応

実は、この5つの仮説について社外講演したことがあります。講演を聞きに来てくださった皆さまに「どの仮説が印象的でしたか?」とアンケートをとらせていただいた結果もあわせてご紹介します。

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それぞれ興味を持っていただけたものの、最も票が集まったのは最後の「社員のライフスタイルをサポートする場」という役割でした。確かにいち生活者として考えると、「仕事がうまく進む」ということよりも「生活が豊かになる」ということのほうが自分にとってよりメリットを感じやすいことなのかもしれないですね。

まとめ

今までの事例、考察、仮説は以下のようにまとめられます。

  • 「働く」ということを、全てオフィスに閉じ込める状況は少しずつ不自然となってきている (cf. ワーカーの変化、テクノロジーの進化、オフィス外のはたらく場の拡大)
  • ただし、全ての「働く」がオフィスから外に出て行く(=オフィスがなくなる)のが良いというわけではない
  • 街全体で俯瞰したとき、街中に分散させたほうが良い機能と、オフィスとして受け止め続けるべき機能(ex.5つの仮説)とがある
  • このすみわけをきちんと考慮し、「街全体で働く」という大きな概念のもとで、オフィスを構築していく必要性が増大してきている

一方、逆説的ですが、今回ご紹介した5つの役割を備えた拠点というのは、もはや「オフィス」や「ワークスペース」という名前で語られるものではなくなるかもしれないとも思っています。〇〇スペースのような新しい名前で、企業が所有・管理する新たな拠点形態が生まれてくるのかもしれませんね。

あくまで一般論的な考察に留まっている部分もあるため、個別のご相談は大歓迎です。ぜひ私たちと一緒に、オフィスの未来のあり方を考え、実験していきましょう!

本研究にかかわった人

若原
企画立案、考察&仮説立案、レポート執筆
研究所内WORKSIGHTチーム
海外事例収集
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