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【特別企画】奥田民生氏に聞く!「大迷惑」で描いた
サラリーマン像と、これからの働き方

今年の5月に発行したワークスタイル研究所アニュアルレポート2018の特集企画は、「WORK SONG CHRONICLE ~「歌」に描かれる働き方~」でした。地方からの集団就職を歌ったあの歌や、有名な栄養ドリンクのあのCMソングなど、歌詞からその時代の働く様子や価値観がイメージできる日本の歌謡曲を「WORKSONG」と名付けて収集・分析し、日本人の働き方が戦後どう変化してきたかをあらためて振り返ることにチャレンジした企画です。

そのWORKSONGの中でも特に、「サラリーマン」の日常と悲哀を、ユーモアを絡めながらリアルに描いていたのがユニコーン(https://www.unicorn.jp/)でした。彼らはいったいどんな経緯で「サラリーマン」をテーマにした楽曲を制作することとしたのか?アーティストでありながら「サラリーマン像」をうまく捉えて描き切った彼らの、「はたらく」に対する考え方とは?これらを明らかにし、世のビジネスパーソンに向けた新たな示唆を導きだすべく、当研究所では特別企画として、ユニコーンの奥田民生氏に直撃インタビューを遂行いたしました!

◆奥田氏インタビュー

対談風景

“楽しいこと”だとしたら忙しくても“やる”それはやってみないとわからない。

尾藤雅哉(以下、尾藤):
10代の頃、若き日の民生さんは“働く”ことに対して、どのようなイメージを持っていましたか?


奥田民生(以下、奥田):
今思えば当時、もしも音楽をやっていなかったら故郷の広島で車の修理工になりたい、という気持ちがなんとなくありましたね。車は好きでしたし。でも結局バンドをやり始めて、音楽をやるのが楽しいなってなり、音楽に携わる仕事に就けたら良いなとは思っていましたね。


尾藤:
それは何歳くらいの頃ですか?


奥田:
たぶん高校生くらいですけど、そんなに深く考えていたわけではなくて……もういつの間にかこうなっちゃいましたからね(笑)。音楽の仕事って意味では、ライブハウスだとかそういう仕事だってあるじゃないですか。そういうのでもアリはアリだと思っていましたね。ただ、できることなら演奏していたい……その程度ぐらいに考えていましたね。


尾藤:
2019年3月に発表された新作アルバム『UC100V』の初回盤には「働き方改楽 なぜ俺たちは楽しいんだろう」という特典DVDが付いていました。結成33年目を迎えた今もなお、僕らの目から見てユニコーンの活動はとても“楽しそう”に映ります。


奥田:
そうですね。50歳を超えた今となっては、何かをやろうとする時に無理矢理にでもテンションを上げないといけないんですよ。だから例え思っていなくても“楽しい、楽しい”って口に出すのが大事で(笑)。


尾藤:
もう自己暗示というか(笑)。


奥田:
そうそう(笑)。もう年齢的にしんどくなってしまうんでね。この特典のタイトルはABEDONが付けたんですけど、実際に“楽しい”って口に出していると本当に楽しくなってくる、みたいなことが言いたかったんだと思います。俺もメンバーも放っておくとサボりたがりですから。あと“楽しいこと”だとしたら忙しくても“やる”じゃないですか。しかも楽しいことかどうかはやってみないとわからなかったりするので……最初は楽しくなくても“楽しい!”って言いながらやってみる状況が大事という結論になったんじゃないかな(笑)。


尾藤:
なるほど。ちなみに長年、音楽というひとつのことをやり続けてきたことで時には嫌になったりしたことはないのですか?


奥田:
“休みたいな”って気持ちになったりはしますけど……音楽をやっている間って遊んでいるのとそんなに変わらないですからね(笑)。しかも休んだところで“何をするんだ?”ってところもあるし……そんなこと言ってちゃいけない仕事のような気もするし。死ぬまでずっとできるかどうかもわからないじゃないですか。だからやれる時にやっておかないといけないなって気持ちもあるんだと思います。


尾藤:
映画『引っ越し大名』の主題歌「でんでん」も、監督の考えやイメージを聞いて制作したそうですね。音楽や歌詞を生み出すのにテーマなどは重要なのでしょうか。


奥田:
それは非常に大事ですね。何もないのに曲なんて作らないですから。相手の考え方や要望を受けて何かを生み出すというのが大事だと思います。あとはやっぱり締め切りがないとやらないですよね。このふたつはとても大事ですよ。


対談風景

サラリーマンの世界を知らないからこそ想像することで「大迷惑」のような歌詞が書けたんだと思う

尾藤:
ユニコーンには「大迷惑」や「働く男」、「ヒゲとボイン」など“働くこと”をテーマにした名曲も多いですが、なぜ民生さんはサラリーマン経験のないのにこのような曲を書くことができたのですか?


奥田:
僕はサラリーマンの経験がない分、どこか“申し訳なさ”と“あこがれ”みたいな気持ちがあるんですね。だから勝手に想像して作ってみたんですよ。僕ら自体は売りにするつもりはありませんでしたけど、当時はなぜかそういう曲が続きましたね。


尾藤:
「大迷惑」は単身赴任するサラリーマンの悲哀を歌った楽曲です。当時、身近にモチーフとした人物などはいたのですか?


奥田:
バンドで(広島から)東京に出てきて事務所に所属していても、オフィスにはサラリーマンがいますからね。例えば「大迷惑」は、本当に人事異動をした人が身近にいたからあんな内容になったんですけど。そうやって世の中を知らないまま田舎から上京してきて、一番身近にいた事務所の人などからネタを持ってくるというか……そんな感じで始めているんだと思います。今でも歌詞を作るのは好きじゃないんですよ。“歌詞を作る”という行為って普通に暮らしていたらやらないことじゃないですか。なので昔は、“どうやったらできるんだろう?”、“どうやって作るんだろう?”ってやり方がわからないわけですよ。それでも見よう見まねでやり続けることで、少しずつ書けるようになってくるんですけどね。なので……たまたまそうやって身近な出来事をモチーフに作ったら割と簡単にというか……歌詞が書けたから、こういう感じだったら自分にもできるんだって調子に乗って何曲かやったんじゃないですかね(笑)。


尾藤:
多くの“僕たち/私たち”に当てはまる普遍的な余白があったからこそ、聴き手は勝手に自分の思い乗せることができて、長きにわたり歌い継がれる名曲になった気もします。


奥田:
「大迷惑」は曲が先だったんですよ。で、なんかスピーディな曲調だし、叫んでいる感じだったので“何に叫べばいいんだろう?”、“何に怒ったらいいんだろう?”ってことを考えた時に……普通に“おまえが好き”だとかはもうありふれてすぎているとなり、政治的なことを歌うのも俺じゃないだろう……“じゃ単身赴任だ!”っていうことですかね(笑)。ほかに誰かがやっていたらやりませんし……そんなもんですよ。


尾藤:
あと「大迷惑」は悲劇的な出来事を明るく笑い飛ばすような曲調で、歌われている内容とサウンドにギャップがあるのも印象的です。


奥田:
そんなに悲しい歌でもないですよ。そのうち(マイホームに)帰るんだし(笑)。たぶんね……知らんけど(笑)。ありふれたエピソードなんですよ。それを大げさに叫んでいること自体がちょっとバカバカしくておもしろいだろうなってことなんだと思いますよ。


尾藤:
異なる二面性を内包した音楽にした理由は?


奥田:
“明るい曲に暗い歌詞”だとか、逆に“暗い曲に明るい歌詞”っていうのは意識してやっていた時期がありましたね。それのほうがおもしろいものができる気がして。どこかひねくれていたり、ねじれていたりする音楽が好きでしたし、曲調通りの歌詞を俺が作ったとしても、そういう才能がある人に敵うわけもないと感じたでしょうから、何か“ひねり”を加えないといけないじゃないですか。その時に、自分がサラリーマンの世界を知らないからこそ、想像することでああいう歌詞ができたと思うんですね。やっぱり、どこかリアルじゃないですし。あとやったことがないことを想像するほうが、自分がやる気になるかなって気持ちもありましたね。


ユニコーンの活動は“仕事(笑)”みたいな感じ(笑)

尾藤:
現在の民生さんの“仕事/睡眠/食事/趣味”といった時間の使い方を円グラフに配分してもらえないでしょうか?


奥田:
そういう意味では……仕事の割合がめちゃくちゃ多いと思いますけどね。ただ誰かと話をしているだけでも仕事っちゃ仕事の場合もありますし……ただ演奏しているところだけではないですからね。そういう意味で言えば、ほとんど仕事ですよ。だから……こうでしょうね(図参照)。なんか“仕事(笑)”みたいな感じというか(笑)。


時間の使い方円グラフ

尾藤:
仕事の割合が8割!(笑)


奥田:
食事なんかは“その他”にも“仕事”にも入るし(笑)。でも、人間が集中できるのはちょっとの時間だけなのを知っているので、頑張っているのは少しだけですよ。


尾藤:
この図を観るとものすごく仕事しているように見えます(笑)。


奥田:
だから“(笑)”なんですよ。音楽で飯を食うって言うのが僕の中ではそんなに真面目にずっとやることではないイメージでしたしね。


尾藤:
例えば遊びの要素があるからこそ真剣になれるという側面はありますか?


奥田:
そうですね。ユニコーンというバンドは本当にこの図のような感じですよ。別に遊んでいるわけではないですけど“遊んでいる”んですよね。


尾藤:
例えばもし民生さんがサラリーマンをやるとしたら、やりたいことの業界と職種はなんですか?


奥田:
えぇ?!サラリーマンですよね……商品開発とか?あとは倉庫に大量に余っている在庫をどうやったら売れるかの戦略を考えたり(笑)……そういうほうが向いているかもしれないですね。


尾藤:
では、もし民生さんが企業の社長をやるのであれば、従業員のどんなところを評価基準に考えますか?


奥田:
やっぱり“その場に応じたアイディアを出せる人”になるのかな。ずっとすごくなくても良いんだけど、お題が目の前に出てきた時に準備なしにパッと解決できちゃう人というか……そういう大喜利的なお題に瞬発力で応えてくれる人は評価したいですけどね。瞬間に何かを思いついて行動するっていうのは、人間の能力として大事だと思うんですよ。ライブはまさにそうだったりしますし。あとお笑い芸人の方でも、急に話題を振られた時におもしろいことを言えるかどうかもすごく大事じゃないですか。それって練り込まれたネタをやっておもしろいのとはまた違う才能ですから、僕としてはそういう瞬発力はすごい大切だと思いますね。


尾藤:
なるほど。民生さんがサラリーマンとして働くとしたら、やりがい/賃金/人間関係/時間といったさまざまな要因が絡んでくる“働き方”について、何を重要視しますか?


奥田:
何かが突出していたらいいんじゃないですか。すっごいたくさんお金がもらえるのなら、自分に向いてなくてもやるかもしれないし……ただし、そういう欲は年を取ってくると減ってきたりする(笑)。でもまぁ、さっきも言ったように“アイディアが出せる現場”がいいかな。


尾藤:
今では画像や写真の加工ソフトであるPhotoshop、Illustrator、音楽でもPro Toolsといった編集ソフトが広く普及したことにより、プロ並みの専門スキルを持った人たちが非常に増えました。そういう状況にあって、民生さんの考える“プロとアマ”の違いとは?


奥田:
スタート・ラインがみんな同じになるので、あとはその機械や機能を“どうやって使いこなすか?”がすべてだと思うんです。例えば目の前にあるペンにしても大体の人は文字や絵を書くけど、もしかしたら“書かないで”使う人が出てくるかもしれない。常々、人と違うことを考えるのが大事だと思うので、今の時代、誰でも同じようにできる状態だからこそ、才能がある人は逆に目立つと思うんですよ。でも機械のすごさに依存してしまうと、気づいたらみんな同じ物を作っていた……ということにもなりかねない。なので、機械は機械だからと半分馬鹿にしていないといけないような気がしています。僕の場合、すごい使いこなせる人は“使える”ことによって別のことが考えられなくなるかもしれないと思ってしまうので、ちょっと鈍臭いくらいが良いと思っているんですよ。Pro Toolsにしても、スマホみたいに身近なものにしても機能の半分も使っていないように思いますから。僕自身、マニュアルも見ないので、こんな機能があったんだって未だに発見したりしますからね。それぞれの使い方次第だと思うんですよ。物は便利で良い物ばかりだと思うので。


尾藤:
たしかに自分がどのような距離感で付き合っていくかは重要ですね。


奥田:
例えば僕がもし現代の高校生で、今の時代のようなPCと音楽編集ソフトを手にしたら、“これでやれるすべてをわかりたい!”と思ってものすごくのめり込むでしょうね。昔は隣の人が何をしているかが本当にわからなかったんですよ。音楽をやるにしても、どうやって弾いて曲を作っているのかが本当に謎だったから自分で考えるしかなかったんですよね。その創造力というものは昔のほうが湧いたのかもしれない。今はもう想像がつくでしょ。やり方や答えがわかってしまうとつまんなくなってしまうこともあると思うんです。理解していないからこそ、自分なりの独自のやり方が発明できると思うので、あえて“これ以上知らないようにしておこう”って場面もありますよ。技を覚えてしまうとそっちが楽しくなってしまって、もともとの曲はどうでも良くなってしまうようになってしまうかもしれないですからね。


尾藤:
たしかに。そういう新しい機材などの情報に対してアンテナはどのように張っているのですか?


奥田:
いや、張ってないです。もう俺、楽器を買うの辞めたし(笑)。もう手元にあるものでいいやと。それよりも、科学の進歩がどんどん進むのに対して、果たして自分はこの先の未来に対応できるのだろうか?ということは考えますね。ちょっとくらいいろんなことを理解しておかないと対応もできないじゃないですか。さっきの音楽編集ソフトもそうですけど……“ギリギリ付いていけるかな?”って不安な気持ちがありますけどね。たぶん“自分には関係ない”って無視することもできるでしょうけど、自分としてはある程度は時代に乗っかっていきたいと思うし、そういう新しい出会いをおもしろがりたい。今やっているYouTube(※RCMR Official YouTube Channel)にしても、思いついた曲をすぐに形にして発表することができるってすごいことじゃないですか。昔はできなかったことなので、そういうのはやったほうが良いなと思いますからね。


対談風景

例え好きじゃない職種でも評価されるのはうれしいと思う例えそれがAIからでも(笑)

尾藤:
今後また「大迷惑」や「働く男」などと同様のテーマで楽曲を制作するとしたら、どんなアプローチがありそうですか?


奥田:
最近タクシーに乗ると広告が出るじゃないですか。“AIで人事を評価しよう”とか……“うわ、そんなんされたら俺、どんな評価なんだろう”って思いますけど(笑)。でも若い奴の中にはAIに評価されるために頑張る人も出てくるわけでしょ?そうしないと給料が上がらないんだから、そうするしかない、みたいな。そんな時代に付いていけるかなって(笑)。だからそんなCMを観て、“すげーな”って思う人と“これはいらないな”って人と“半分くらい馬鹿にしている人”といろいろいるのが世の中だと思うので、それぞれ好きに考えていればいいと思いますけどね。


尾藤:
例えば民生さんにとっての音楽のように、“好きなことを仕事にする”ことの良いこと、悪いところとは?


奥田:
デメリットはないですよ。仕事にしたから辛いこととか別にないですからね。むしろ好きなことだからいろいろアイディアをたくさん出そうって思うわけですし。それで失敗したとしても自分のせいだから“しょうがない”と思うわけで。でも……もしそういう好きじゃない職種にいても、なにかしら貢献できて褒められたり、評価されるのはうれしいでしょうから。例えそれがAIでも(笑)。やっぱり褒められるのって大事だと思うんですよ。


尾藤:
そうですね。民生さんはバンド・メンバーのことは褒めるんですか?


奥田:
(笑)……いや、別に褒めない……でも“今のテイク良かったよ!”くらいは……お世辞でも言いますよ(笑)。俺も褒められるとうれしいですからね。恥ずかしいですけど。


尾藤:
なるほど、ありがとうございます!最後に、民生さんにとって“働く”ということの意味は?


奥田:
やっぱり褒められたりするのも含めて、評価って誰かが決めることだったりするじゃないですか。相対的なものだと思うし、自分だけ気持ち良ければ良いということでもないから頑張るんだろうと思うので……働くことは“サービス業”なんじゃないですかね。でも音楽の世界だと、100万枚売れるのはすごいことですけど、そうじゃなくても素晴らしいミュージシャンはたくさんいるわけで、必ずしも1位になれば良いって職業でもないんですよね。別に2位でも全然良いです、みたいな。ラーメン屋なんかでも、人によってうまいかどうかがバラバラだったりするように……必ず良い物っていうのは世の中に存在しないんですよ。それはもうそれぞれの好みですから。まぁ、音楽を作ったとして100人の中のひとりしか喜ばないとなると凹みますけどね(笑)。でも、100人中99人が喜ぶのもちょっと違う気がするんですよ。だから……40人くらいかな?それくらいがちょうど良いですね。音楽をやってる上で、一般的な人じゃない人も含めて好きだと思ってくれる人がひとりふたりではないというのが大事だと思っているんです。むしろ100人全員に良いと思われたら“これは違う!”と思わないといけないんですよ。やっぱり“全然わかりません”って言う人もいるべきだし、そういう人にまで“良いですね!”って言われなくていいんです。だから音楽という職業は評価の基準が微妙ですよね。そういうものはAIに評価できるのだろうかって。AIは頭が良いからそれくらい考えるのかな?ならAIを喜ばせる曲を作らないとな!それはそれでおもしろいことかもしれないですけどね(笑)。でもAIに何を学習させたかで評価軸が変わってくるなら、おれはAIを修行する側に回ろうかな(笑)。コイツ、すごい偏った評価するなって(笑)。


尾藤:
民生さんが手がけた評価AIの開発とか、すごくおもしろい試みになりそうですね(笑)。


奥田:
まぁでも……俺が今日一番良いことを言ったのは、俺が興味を持っているのは“倉庫でだぶついている在庫を何とかする”ってことですね(笑)。なんかそこに一番やりがいを感じる気がする。それが将来やってみたいことかもしれないですね(笑)。倉庫にだぶついている在庫があったら俺に教えて下さい。AIに負けそうだけど(笑)。


◆取材後記

最後に、当研究所前所長の若原が“働き方の研究者”視点で奥田民生氏の発言を振り返り、自然体で在りながら人を惹き付けてやまない奥田民生氏のワーク・ライフ論の中で、世のビジネスパーソンが参考にできそうなポイントについて考察を深めていく。

意味のある仕事は“おもしろがり力”から生まれる

今回は民生さんの人となりや考え方などが感じられる、大変貴重なインタビューだったと感じました。一方で、“働き方の研究者”視点で振り返ってみた時に“これは世のビジネスパーソンにとっても参考になるな”という考え方もたくさんありましたので、取材後記としてそのあたりを振り返ってみようと思います。

まず印象に残ったのが、“楽しいかどうかはやってみないとわからない”という言葉です。今の時代、“会社から与えられる仕事はやらされ仕事でつまらない。自分でやりたいことを自由にやれたほうが楽しい”という主旨の話はそこかしこで見聞きします。確かにそういうことも少なくないので否定はしませんが、やらされ仕事だって、何かおもしろいことないかな?と思ってやってみたら意外と楽しいことがあったりするかもしれないですよね。最初からマイナスの先入観を持つより、どうせやるならおもしろさを探そう、という前向きさを持ち続けることは、ビジネスのさまざまな場面でも大事なのではないでしょうか。

また、民生さんが“その場でパッとアイディアを出して問題を解決する人”や”アイディアを出せる現場”を大事にしているということからも、前向きにおもしろがる力の重要性を感じました。“倉庫に眠った在庫をさばくことに興味がある”という話も、民生さんは在庫管理をクリエイティブな仕事としておもしろがっているのでしょう。大量の在庫を見て、憂鬱になるか、ワクワクするかで、生まれるアイディアや仕事への考え方、取り組み方も変わってくるでしょうから、そういった民生さんの“おもしろがり力”の高さに驚かされた場面でもありました。

VUCA時代(もともとは軍事用語、転じて、近年のビジネス環境を表す言葉としても使われるようになった、Volatility「変動性・不安定さ」、Uncertainty「不確実性・不確定さ」、Complexity「複雑性」、Ambiguity「曖昧性・不明確さ」の頭文字からなる略語)ともいわれる先行き不確定な世の中で、新しいことを生み出していく0→1の部分は、数値化して評価することがなかなか難しいところだと思います。ただし、数値化して評価するということはある意味、そのこと自体の良しあしについてまでは思考が至らないわけですよね。新しいことを生み出すには、自分はそれをいいと思うか、面白いと思うか、と自分で判断できることが、評価するほうにもされるほうにもさらに必要となってくるのかもしれません。“おもしろがり力”はこれからの働き方において、ひとつのキーワードになるのかもしれないと思いました。

テクノロジーは“(笑)”をつけるくらいがちょうどいい

個人的に一番感銘を受けたポイントは、テクノロジーとの向き合い方についての考え方でした。“半分バカにするくらいで付き合うのがちょうどいい”という民生さんの持論は、まさに言い得て妙ですよね。

今や“便利っぽいサービス”が世の中に溢れていますけど、本当にそれらは必要で便利なものなのか?もしそのサービスがなかったら……それはそれで、意外とそこまで困らなかったりもすると思うんです。新しく出てきたサービスを“便利だ”と盲信してしまう場面も少なからずあるかもしれない、と感じました。日々進化し、新しい製品やサービスを生み出すもととなるテクノロジーに対して、“半歩下がったスタンスで付き合っていくのが良いんじゃない?”という民生さんの言葉には、“将来はAIに仕事を全部取られちゃうかも?”みたいな漠然とした不安を一気に吹き飛ばしてくれるような本質を感じました。新しさに良くも悪くも振り回されすぎずに、キャッシュレス(笑)、自動運転(笑)のように、人間側が“(笑)”をつけていくくらいのスタンスを持とう、という考え方にはハッとさせられる方も少なくないんじゃないでしょうか。そこが僕としては一番“なるほど!”と感じたポイントでした。

こうやって振り返ってみると、ご自身の多様なご経験をベースに、感じたことを自然体で言葉にしてくださった民生さんのお話は、ミュージシャンとビジネスパーソンという一見離れた世界にも共通する本質を言い当てられていることが多く、とても貴重な話を伺うことができたと思っています。

本企画にかかわった人

若原強(前ワークスタイル研究所 所長)
企画立案
天野光太郎(協奏ディレクター/コーディネーター、元フェンダーミュージックセールスマネージャー)
企画プロデュース・アレンジ
尾藤雅哉(ギター・マガジン プロデューサー)
インタビュー・記事化
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