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ミレニアル~Z世代の「働く」
を垣間見るレポート(前編)

背景

ミレニアル世代、Z世代など、20代〜30代の若者が社会のあり方を変動させる世代として注目を集めています。それは、彼らが今までの世代とは大きく異なる価値観を持つと考えられているからです。消費行動やネットの利用動向等々、注目される彼らの価値観は様々ですが、キャリア観も大きく変化しつつあるといいます。

若手ワーカーの価値観は果たしてどのように変わっていくのでしょうか。そして働き手が変われば、働き手を受け入れる企業のありかたも変わるはず。未来に向けて、企業はどう行動すべきでしょうか。

若者のキャリア観における変化の兆しをとらえ、未来のキャリアがどう変化するかを考えるべく、コクヨ社内と社外をまたぐ調査プロジェクトが発足しました。その取り組みを前後編に分けてレポートしていきたいと思います。

まずこの前編では、社会人(コクヨ社内)と学生(コクヨ社外)のコラボ企画として取り組まれた、ワークスタイル研究所と株式会社リ・パブリック 学生チームの共同調査についてレポートします。

この調査では、10年前にはなかった働きかたを実践し、かつ生き生きと仕事をしている若者8名にインタビューを行い、結果を元にプロジェクトチームで議論。若者の価値観とベテラン社会人の価値観の違いをあぶり出すことでキャリア観の変化の兆しを見出し、それを元に未来における働きかたの変化を予想しました。

⽅法

20〜30代の男女8名を対象に、エクストリームユーザーインタビューを行いました。彼らの共通点は、10年前にはなかった働きかたをしていること、かつ自分らしく生き生きと働いているように見えること。例えば、省庁に勤めながら自分のやりたいプロジェクトを自ら立ち上げ実行する女性。本人も「いくつか分からない」ほど多くの仕事をこなすパラレルワーカー。大学に通いながら起業した学生などなど……。

各人に1〜2時間かけて、自身のライフヒストリーやキャリア観を尋ねました。その後、複数のインタビュー対象者に共通している行動特性やキャリア観をもとに、ベテラン社会人と学生の世代横断チームで議論を重ねました。

インタビューと議論の結果、キャリア形成のモデルが生まれたりチーム内の世代間ギャップに気づいたりと、様々な気づきが生まれました。その中から、新しく生じてきていると考えられるキャリアに対する考えかたを4つ選び「キャリア観の変化の兆し」としてまとめました。

結果:変化の兆し

  • ⑴ 決めてから行動する ⇒ やってみて考える
  • ⑵ 修行を経てやりたい仕事ができる ⇒ 修行も準備も要らない
  • ⑶ 職場は居場所 ⇒ 職場はリソース
  • ⑷ ワークライフバランス ⇒ ワークとライフを分離しない

⑴ 決めてから行動する ⇒ やってみて考える

プールに飛び込む少年

「今の大学生はやる前から正解を求めすぎている。えいやって決めて飛び込んで、違っていたら軌道修正するくらいでいい。違った、失敗したを学びに変えて次により良い道を取れるかが重要」
ーー学生時代の活動を発端に、大企業に勤めつつNPO活動に力を注ぐ20代男性。


「とりあえず大企業に入っておけば安心」「自分が何をしたいか分からない」。進路に迷う若者からよく聞く言葉です。一方、独自のキャリアを歩むインタビュー対象者には対照的な行動特性がありました。それが「まずやってみる」「その結果や感じたことから、目的も手段も方向修正していく」、いわばアジャイルなキャリア形成。

海外の学生を日本に呼びたいと思い、「呼びます」と宣言してみたら本当に学生が来ることになってしまった。地産地消を広めたいと思い、まず自宅で小規模な夕食会を実施した……。彼らも最初からやりたいことが見えていたわけではありません。何となく興味があると感じたことを実行可能な範囲でやってみて、その体験や結果から自分の価値観を再認識し、やりたいことを精緻化しているのです。

試行錯誤を繰り返す彼らは、早い時期から多くの経験値とアウトプットを手に入れます。それが人目に触れて仲間や次の機会に出会いやすくなり、思わぬキャリアの転換・発展につながっていきます。

社会視点

インターネットを介してあらゆる情報を入手できる現代。ですが二次情報が増えたことで、かえって若者の世界が狭まっているという見方があります。
「動画を見れば分かるからわざわざ体験したいと思わない」「選択肢が多すぎてどれが良いか分からない」など、行動する前に他の選択肢や行動に伴うリスクが見えすぎて、行動力にブレーキがかかり、本来人の感覚や思考を刺激し価値を生む源であるはずの直接体験の機会が減っている、というのです。
「自分のやりたいことが分からない」と悩む若者の背後には、多様なキャリアの成功事例が溢れる二次情報の嵐のなかでどれも気軽に行動に移せず、その結果どれが自分に合っているのか、自分が何をしたいのか分からなくなって動けなくなる苦しさがあるのかもしれません。

⑵ 修行を経てやりたい仕事ができる ⇒ 修行も準備も要らない

AからBへのペンの線

「企業選択の基準は、若いうちから自分の考えた事業を世に出せそうか。入社して3~5年でできなければ、えらくならないと任せてくれない会社なんだなと判断して辞める」
ーー新規事業創出を志し大企業に入社した20代男性。

「内定先の同期が皆はじめの数年を修行・準備期間と捉えていて、合わないと感じ内定を辞退した」
ーー学生起業家。


インタビュー対象者の時間感覚には際立った特徴がありました。彼らは停滞を嫌い、目標に近づけない時間が続くとフラストレーションを感じます。それは、転職するか判断する期限を自ら設定したり、ぶっつけ本番の戦いである起業をあえて選ぶなどの行動にも現れています。

「新人時代の準備・修行は当たり前」「やりたい仕事ができるのはしかるべき地位に上りつめてから」。企業が個人と社会をつなぐほぼ唯一の場所だった時代は、それがキャリアの常識でした。ですが彼らは、時間がかかりすぎると感じる場所からはさっさと立ち去ってしまいます。あるいはそのような場を選びません。

現代は状況が目まぐるしく変わり、いつチャンスが潰えるか分かりません。さらに目標の実現手段も多く、いざとなれば会社に頼らず自分でスキルを習得したり人脈を増やしたりすることもできます。やりたいことのために今我慢する辛抱強さは、もはや美徳ではなく時間の無駄なのです。

学⽣の所感

インタビュー対象者は多くが優秀で、今のキャリア以外にも転職・起業など他の選択肢をとれる傾向にありました。そのために、このような行動が見られたとも考えられます。
今後、「意味の無い時間を多くとられる」と感じさせる仕事や企業は優秀な若者から選ばれなくなっていくのではないか。その時、企業はどうなるのだろう。
そんな予感に、少しどきりとしました。

⑶ 職場は居場所 ⇒ 職場はリソース

会議風景

「組織の人々を動かせるのはやはり中にいる人で、外部の人だと発言力が乏しい。だから今の仕事で頑張っていきたい。この職場で自分のしたいことや好きなことをできるようになってきたのは、大きな組織の中でどう振る舞えば良いか分かってきたから」
ーー仕事に自分の価値観を反映させ、組織内で自ら事業も作る国家公務員の30代女性。


インタビュー対象者の多くは「自分は職場では理解されない」と話します。彼らの価値観や行動は、基本的には同じ部署の上司や同僚に理解されないというのです。彼らは必ずしも所属組織の中でエリートコースを歩みません。それどころか、あえて「勝手なやつ」とラベリングされ、自由に動ける立場を確保する場合さえあるようです。そんな彼らにとって職場は「居場所」と呼べる場所ではないかもしれません。

ではなぜそこにいるのか。それは、目標達成に必要な人脈や資金・影響力といったリソースや、生活の手段を得るために他なりません。彼らは、自分なりにかつ戦略的に、社内での人間関係やポジションを作り上げます。また、少し離れた部署や企業外に共感者や仲間のネットワークを持ち、それらを駆使して自分の目標を実現します。

社会視点

成長時代の社会では「より〇〇に(高く、速く、安く)」が社会の大義であり、その競争に参加することがそのまま企業の社会的意義になりました。 ですが今日の成熟社会では、あらゆるモノやサービスが飽和。企業は、競争という大義が破綻したなかで自らの存在目的を見出すことが難しくなったといえます。

一方、技術や制度の発達により、現在は個人から社会へ働きかける多様な手段があります。
その状況の中で、若者は「組織の中で何をしたいか」よりも先に「社会の中で何を達成したいか」を考え、実行できるようになりました。
実際に、就職前から自分自身の指針や目指す社会像を持っている人も増えつつあります。
仕事の目的設定が企業から社会へと移行しつつあるといえるでしょう。

⑷ ワークライフバランス ⇒ ワークとライフを分離しない

背中合わせの大人と子供

「育児と仕事、片方を諦めるのはおかしいと思っていた」
ーー育休を機に大企業から仕事の融通がきくNPOに転職した30代女性

「仕事と生活の豊かさは関連し、社会にどう貢献できるかと仕事は関連する」
ーー仕事と育児を両立する国家公務員の30代女性。


仕事と生活の位置づけはワーカーにとって重要なテーマです。以前は結婚や出産を機にワークライフバランスを考えはじめる人が多くいましたが、最近は事情が変わってきているようです。

インタビュー対象者の発言や描かれる未来像から見えてきたのは、「ワークもライフも自分の人生の一面であり切り離すものではない」「何かのために他のものを諦めたり、我慢したりするのはそもそもおかしい」という価値観。複数のインタビュー対象者が、はっきりと「ワークとライフは分けない」と発言しました。また女性では、育児も仕事も納得のいくよう取り組むために、遠隔勤務やとっさの予定変更がしやすい環境を職場選びの条件にするといった片方に優先順位を置かない選択をした人もいました。

起業、就業、パラレルワークなど形態は様々ですが、彼らは共通して自分の時間の使いかたに一貫性や納得感を持つことを大切にしているのでは、と感じました。

学生の所感

独自のキャリアを突き進むようにみえる彼らも、社会的地位や経済的安定をかなぐり捨てているわけでは決してありません。周囲の評価が高く居場所を複数の選択肢から選べることも多い彼らだからこそ、やりたいことと生活・人間関係の安定を両立するための環境を選択できているとも考えられます。
自分自身このような生き方には憧れつつ、果たして誰しもできることなのか、という疑問もあります。

考察

以上のように、インタビューと議論から4つのキャリア観の変化の兆しが見出されました。

  • ・やりたいことはやりながら見つけていく
  • ・停滞や無駄な時間を避ける
  • ・職場には理解よりも目標達成の手段を求める
  • ・ワークとライフを一体のものとして捉える

以上の変化の兆しを踏まえ、今後若手ワーカーの働き方にはどのような変化が起こり得るでしょうか。

上記のキャリア観が広まると、入社後早い時期から自分の目標に関連する仕事を遂行して実践知や人脈を身につける働き方や、やりたいことを見つけるヒントになりそうな魅力的な仕事に取り組むことを望むワーカーが増えると思われます。また、企業にコミュニティとしての価値よりも目標達成のリソースを求める場合、1つの企業内に収まるよりも複数企業を横断して働く方がはるかに効率的で、自由度も高くライフスタイルに合わせやすいでしょう。

実際に、従来型の体系的な企業研修を嫌がる若者は増えており、それに対して企業側もプロジェクトベースの研修を行うことが増えてきているといいます。
一方、日本企業の多くは他の企業との兼業を推進してはおらず、副業禁止の企業も少なくありません。また仕事の単位や就業時間の規則なども、社員が企業活動全体に関わることを前提とするものが多いなど、働き方の変化に適したワークスタイルとは言いづらいのが現状です。
さらに、入社前は自分のやりたいことがなかったがその後やりたいことを見つけた場合、理想的な企業とワーカーとの関係はどのように変化するか、などの疑問もあります。

若手ワーカーと企業とのギャップは、このままでは広がっていくでしょう。未来に向けてワーカーはどのようなキャリアを設計し、企業は彼らとどう関わっていくべきでしょうか。

レポート後編では、この調査結果をベースとしながら、コクヨの若手社員を中心として、企業の中でのこれからの「働く」に対する疑問と興味の掘り下げを行っていきたいと思います。

本研究にかかわった人

小林実可子(株式会社リ・パブリック インターン生)、笹森奎穂(東京外国語大学)、茂木郁也(東京大学)
調査設計、インタビュー実施、レポート執筆
田村大(株式会社リ・パブリック共同代表)、若原(ワークスタイル研究所 所長)
調査企画監修、分析協働
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