なんか変化ワークスタイルけんきゅうしょ

ナビを開くボタン
news_detail_mv05 Project 05

「ハモる」×「はたらく」
レポート(前編)

皆さんはふだん、どのくらい歌っていますか?飲みに行ってカラオケで盛り上がる人、自宅で子供と一緒に歌う人、歌はちょっと苦手…でも鼻歌は自然と出てしまうという人、人によってさまざまかもしれません。が、なんらかの形で歌というものに触れることはあるのではないかと思います。

では、ハモるということについてはどうでしょうか?途端にハードルがあがりますよね。ハモれるということは歌のうまい人たちの特権で、自分には関係のないことだ、と思っている人も少なくないのではないでしょうか。

ここで当研究所の新しい研究パートナーをご紹介したいと思います。日立グループのCM「この木なんの木」を担当されていることでも有名な、アカペラグループ INSPiの杉田さんです。杉田さんたちには、コクヨの商品「ドットライナー」のテーマソングを作っていただいているつながりもあり、今回研究でもご一緒することになりました。

歌うこと・ハモることと、はたらくことの関係性を紐解く、異色の研究テーマがスタートします。まずそのレポート前編として、杉田さんのお話を伺いました。

1「ハモる」ことでの
新たな挑戦

杉本さん

INSPi杉田さん お住い近くの逗子海岸にて

若原強(以下、若原):
杉田さんは「hamo-labo」を立ち上げ、今年から活動を本格化されているそうですね。プロのアーティストとして「ハモる」だけでなく、様々な場で「ハモる」を活用した新たな活動を広げていっていると伺いました。hamo-laboでは実際、どんな活動をされているんですか?


杉田篤史(以下、杉田):
hamo-laboでは現在、4つの方向性での活動を考えているんです。それぞれご説明しますね。

■1. hamo-labo「ローカル」

  • ・ハモることで、ローカルのつながりを作っていく活動
  • ・逗子(杉田さんもお住まい)にあるワインバーで月一回開催。ワインを楽しみながら、みんなでハーモニー練習
  • ・最近はゴスペルソング「オー・ハッピー・デイ」に取組み中

■2. hamo-labo「マネジメント」

  • ・ハモることの可能性を、ビジネスフィールドでも探索していく活動
  • ・毎月品川で、近隣企業の方々とイベントを開催中
  • ・前回イベントの概要はこちらから

■3. hamo-labo「エデュケーション」

  • ・学生や子供向けに、ハモることを通じてなにかを一緒に作り上げる楽しさ、相手を信頼することの大切さを伝える活動
  • ・最近では、横浜市の学習塾「スターグローブ」の夏休みイベントとして、アカペラ合唱ワークショップを実施

■4. hamo-labo「ヒーリング」

  • ・癒しを求める人、パワーが欲しい人向けに、人とハモることで自分の居場所が感じられ、心が安定する機会を提供していく活動
  • ・2018年より渋谷などで公開ワークショップを実施予定

アーティストとして「聞かせる」活動に加えて、今後は家庭や会社、地域などの様々な社会的組織の中で、みなさんと一緒に「ハモる」ことを通じて調和を作っていきたい。そういう活動をhamo-laboとしてやっていきたいと思っています。

2「ハモる」って、
あらためてどういうこと?

若原:
「ハモる」って難しそう、、、というイメージを持つ人は少なくないと思うんです。逆に、カラオケでうまくハモれる人をうらやましく思ったり。杉田さんは、ハモることを通じた活動を広げていくにあたり、そのハードルについてはどう考えられていますか?


杉田:
そもそも、歌うことに対して苦手意識がある人ももちろんいると思います。ハモるとなると、なおさらですよね。

でも、最初は歌じゃなくても全然いいんです。例えば、ドの音で「ドー」と声を出しつづけてもらうだけでOKです。そこにハモれる人がソの音をのせていくと、最小限のハーモニーが完成します。これだけでもなかなか楽しいと思いますよ。

そして、できればもう一段階チャレンジしていただきたいです。もう一段階というのは、ハモりの微調整です。ハモっていると思っても、実は微妙にお互いの音程がずれているときが多いんですよ。そこを合わせにかかるということです。

相手の声の高さをよく聴いて、自分の声はもうちょっと上か、下かと試してみるんです。そうすると、ある時ぴったりハモりの音程が合う瞬間がある。その瞬間は、はっきり言ってヤバいです。うわ、きた!!という感じで、別世界がパーッと広がります。

例えば、ドの音とソの音できれいにハモった状態というのは、たくさんのお坊さんが一緒にお経を唱えている状態を想像してもらうと近いかもしれません。専門的に言うと、倍音が気持ち良く鳴っている状態。実際やってみた方々の感想も、大聖堂での音の響きや、お経を聞いているときの気持ちよさに似ている、という感想が多いんです。いい意味での宗教的な心地よさ、気持ちよさを感じるということですね。

そこに自分も参加していると、みんなの声に包まれて、自分の声がだんだん「溶け」て、全体の音しか聞こえなくなってくるんです。この状態は、本当に気持ちが良い。歌に苦手意識がある人でも、ドの音を出すだけでここまでの世界を体験できるんです。

3プロにとっての
「ハモる」世界とは?

若原:
はじめての人でもそんな体験ができるなんて、全然知らなかったです。ぜひ私も体験してみたいです!
ちなみに、杉田さんのようなプロの方々がハモるときには、さらにどんな世界が繰り広げられているんでしょうか?


杉田:
ハーモニーというのは、相手との距離感なんです。相手のあることなので、相対的な距離感ということです。相手がちょっと上に行くと自分も上に行く。相手が風邪をひいていて、うまく音が当たらなく低めに出ちゃうときは、自分もちょっと低めに行く。

僕は、これがアカペラの素敵な部分だと思っています。例えば、音がちょっと低めに外れている人がいたとして、その人をそのままにしておいたら、その人はずっと音を外しているかわいそうな人になっちゃう。でも、周りの人がその人に合わせて音を少し下げてあげると、ハーモニーがちゃんと成り立つし、聴く人も気持ちよく聞けるんです。お互い助け合い、支え合う、まさにチームワークに通ずるところがあるんです。

なので、一番大事なのは相手を観察することですね。相手の声を聴くだけじゃなくて、観察する。耳で聞くだけでなく、アイコンタクトや、表情・雰囲気まで含めて観察して、必要な時は助け合う。


アカペラ・ルパン三世のテーマ INSPi/acappella

若原:
確かに、ハモることを通じてチームワークや人との関係性を学べそうですね。企業研修のコンテンツにもなり得そうです。


杉田:
そうなんです。hamo-laboでは、ハモるために必要な「3つのS」というのを考えていまして、これは働く上でのチームワークにも通ずるところがあると思うんですが、こんな感じです:

まずは「Stand」。これは自立する、ということで、まずは自分のパートをしっかり覚えて歌える状況になりましょう、と。

次に「Sing」。これは単に声を出して歌う、ということだけではなく、先ほどもちょっとお話ししたように、相手と歌い合う、ということです。「歌う」という言葉の語源を調べてみたことがあるんですが、一説には「打ち合う」から来ているそうです。つまり、誰かが声を出して、みんなで手を打ち合って拍子をとる。歌というのは、みんなで手をたたきながら歌うものであると。人どうしの関係性が、「歌う」という言葉の中に入っているんですね。

そして最後に「See」。歌い合う相手を様々に観察し、その観察結果をSingにフィードバックしていくことで、より良いハーモニーが作り上げられます。


若原:
実は私、学生時代からバンドをやってまして、ギターを弾いてるんです。曲によってはコーラスをかぶせたりもしてたんですけど、今までいかに自分が適当にやってきたか、今日身に沁みました 笑。ここまでのお話を伺うと、ハモリの世界ってホントに深いですね。。。もはや歌うというよりも、非言語でのコミュニケーションといったほうが良さそうだなと。人どうしのつながりを豊かにする手段として、すごく可能性を感じますね。

4「ハモる」×
「はたらく」

杉本さんと所長の若原

若原:
ここまでのお話を踏まえ、ハモることの効果、特に私は立場上、働くシーンでどんな活用ができそうかが気になります。


杉田:
はい、先ほどはハモるために重要なことを「3つのS」としてご紹介しましたが、ハモることで生まれる効果も「3つのF」としてまとめています。

まずは「Fun」。ハモることって、まずは楽しいんです。ワークショップなんかも、楽しむこと前提でやったりするじゃないですか。なにかを学んだり身に着けたりするうえで、楽しみながらできる、遊びながらできるというのはとても重要なことだと思っています。

次に「Free」。ハモるときには、部署の違いも、上司も部下も関係なく、組織の力学から自由になれる。これも先ほどご説明したように、ハモるために助け合い、支え合う中で、人間が勝手に作った便宜上の関係性を取り払う力があります。もともとFlatという言葉にしようか迷ったんですが、音楽用語の#や♭と紛らわしいので、近しい意味合いのFreeとしました。

そして最後に「Full value」。これはProject Adventureという、アドベンチャーを通してチームワークを生み出すプログラムで提唱されている考え方なんですが、自分も含め、そこにいる人たちみんなの価値を認め合える、ということです。だれが一人欠けてもハーモニーは成立しない。全体としてきれいなハーモニーを実現するために、みんな、それぞれのパートとして必要なんだと。そこにいるみんな、価値ある存在なんだということが実感できる効果があります。

冒頭にご紹介したhamo-labo「マネジメント」ではこの「3つのF」を踏まえながら、ハモることで、社内の、そして社外とのつながりと調和をいかに生み出せるのかということを探索しています。

5「ハモる」ことならではの、つながりの生まれかた

若原:
例えば、社内運動会をやったり、合宿をしたりなど、チームのつながりを強める取り組みはほかにもいろいろあると思うのですが、ハモることならではの良さ、というのはどういうことがありそうでしょうか?


杉田:
まず、場所と時間にあまり縛られない、ということがあると思います。休みの日でなくとも、会場やグラウンドがなくとも、ハモることは会社の会議室などで、やろうと思ったらすぐできます。

あとは、すぐ仲良くなれる、というのもあります。バンドをやられているとお分かりかと思うんですが、音楽を一緒に演奏すると仲良くなれる、ていうのあるじゃないですか。相手のことをわかった感じになるというか。


若原:
確かにそうですね。ジャムセッションなんかをやると、アドリブのとり方で、その人がどんな人かがなんとなくわかるような気がしますよね。だいぶ背伸びして発言してますけど 笑。でも、たとえ国籍も文化も異なる相手とであっても、一緒に演奏すると仲良くなれる感覚はよくわかります。


杉田:
僕らINSPiの活動をするうえでも、リハーサルと打合せの順番というのがあるんです。先にリハで声を合わせてからのほうが、打合せは絶対盛り上がります。これは経験上100%そうだと言えますね。朝一で眠いメンバーがいたり、機嫌悪いメンバーがいたとしても、一度歌ってから打合せするとバッチリです。これは、働くシーンでコクヨさんとぜひ実験してみたいんです。ハモった後の活性度、みたいな指標を数値化して、エビデンスをとってみたい。


若原:
数値だけでなく、打合せに臨む人たちの表情や姿勢の変化なんかも観察すると面白そうですね。あとは、たとえば運動は大体みんな一度はやったことあるので想像つきやすいと思うんです。でも先ほどのお話を伺うに、ハモるということには、多くの人がまだ経験したことのない素敵な世界が実はある、というギャップもいいなと思いました。つながりを生むうえで、大きなインパクトがありそうです。

6「ハモる」ことは、働くシーンとどう融合できるのか?

杉田:
社歌とか、もっと利用できると思っているんですよ。


若原:
弊社(コクヨ)も社歌あります。あと、「経営の信條」という社訓みたいなものがあって、毎月の朝礼で社員全員で唱和しているんですよ。ただ、こんなこと言ったら関係各所から怒られそうですが、今は若干形骸化しかけている気もします。


KOKUYO経営の信條

杉田:
それ、ハモリましょうか(笑)!勝手にハーモニーにしたら怒られちゃいますかね?全部でなくとも、一節だけでもいいと思います。


若原:
あの朝礼で歌うとかハモるとかあったら、なんか新しいですね!「経営の信條」を歌ってみたら、朝礼がこんなに楽しくなった!みたいな実験も面白そうですね。これは怒られる覚悟でやる意味あるかも。。。

まとめということで、「ハモる」×「はたらく」という前代未聞の実験を行うことになりました。
後編では実際の実験の様子、そしてそこで新たに分かったことをレポートしていきたいと思います。

Profile

杉田篤史
アカペラグループINSPiリーダー
様々な社会組織における人々の調和を考えるワークショップhamo-labo主宰
NPO法人TOKYO L.O.C.A.L 理事

1997年大阪大学でINSPi結成。2001年フジ系「ハモネプ」出演がきっかけでユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。 THE BOOM宮沢和史氏と「ちっぽけなボクにできること」(2002年)長渕剛氏と「翼〜つばさ〜」(2003年)を共作。2005年より日立CMソング「この木なんの木」担当。2012年テレ東系『ふるさと再生 日本の昔ばなし』OP・EDテーマコーラス担当。2015年12月?2016年1月NHKみんなのうた「ドミソはハーモニー」(うたINSPi)が放送。2017年コクヨテープのり「ドットライナー」テーマソングをYouTubeにて発表。インドネシア、タイ、モンゴル、ウズベキスタン、カザフスタン、メキシコ、ブラジル、アメリカ、香港など海外公演も多い。これまでのレギュラーTV番組はBSフジ「ミドリのドレミドリ」NHK BSプレミアム「宮川彬良のショータイム」 BSフジ「堺でございます」など。
2016年よりメンバーの1人が病気療養に入ったことをきっかけに平日はエンタメ系企業にて広報業務を担当、一年半の「サラリーマンとミュージシャンの二足のわらじ」を経て、2017年よりアカペラを会社組織や地域などの活性化に応用するワークショップhamo-laboを各地で開催。東京の下町のコミュニティ活性化を東北や熊本など被災地への支援へとつなげるNPO法人TOKYO L.O.C.A.Lの理事に就任。逗子在住。

一覧に戻る
お問い合わせはこちら